事務連絡

第23回学会 質問と回答

第23回学会の教育講演および総合教育講演に2021年2月28日終了までにお寄せいただいたご質問を講演をいただいた先生に回答をいただきました。ぜひご参考になさってください。

*番号が前後しておりますが、質問の締切日による順番が前後したため、ご容赦ください。

教育講演:頭頸部腫瘍における放射線治療 後藤 匠 先生

Q1:咽喉頭周辺の腫瘍に対して放射線を当てると数か月後に嚥下障害がでることがあります(唾液や食べ物がうまく飲み込めない、痰が絡むなど)。そういった場合、先生はどのような対応で乗り切っていますでしょうか。

A1(後藤 匠先生):ご質問いただきありがとうございます。
放射線治療開始から4〜5週間をピークとしてが生じた咽喉頭周辺における疼痛を伴う粘膜炎(急性障害)により嚥下障害を生じる事があるかと思います。またそれに伴い誤嚥性肺炎に至ることもありこの期間は特に注意が必要であると考えております。
急性障害であれば徐々に改善しますので、基本的には鎮痛剤や抗菌剤などの対症療法で乗り切ります。鎮痛剤に関しては、私は犬ではNSAIDを中心とし不十分な場合にはガバペンチンを追加しております。これらでコントロールできない場合にはプレドニゾロンの使用を考慮しますが前述のように誤嚥性肺炎のリスクがあるため慎重に使用しております。また、猫ではブプレノルフィンやトラマドールを使用しております。ただし、疼痛が重度であり薬剤投与自体が困難なケースでは栄養チューブ設置を推奨し栄養管理と薬剤投与を実施しております。一般的には急性障害は短期間で改善いたしますので、小型犬や猫では経鼻チューブを用いております。
一方で晩発障害として6ヶ月以上経過した症例で生じる嚥下障害は、嚥下筋や周囲組織の瘢痕化、粘膜知覚の低下による嚥下反射障害、脳神経障害などが関与しているとされております。急性障害と異なり不可逆性変化であり機能回復は期待できないため、人医療では栄養チューブ(胃瘻など)の設置が推奨されております。私がこれまで経験してきた犬の咽喉頭周囲の腫瘍において放射線治療から長期間経過後に嚥下障害を生じた症例のほとんど全ては腫瘍の再増大を生じており、純粋な晩発障害としての嚥下障害の経験はありません(ただし、前述のような晩発障害としての組織学的変化を伴い、より強く嚥下障害が生じていた可能性はあると考えております。)このようなケースでは基本的には鎮痛剤等の対症療法を実施しており、フェンタニルなどのオピオイドを使用することもありますが進行性の病態であるため、残念ながら多くはコントロール困難と考えます。
 
 

Q2:岐阜大の成績は週1回の照射のものが多かったように思いますが、週5回などの多分割照射を行った場合はより成績は向上していくとお考えでしょうか。

A2(後藤 匠先生):先生が仰っしゃりますように、かつては当院では週1回の寡分割照射の症例がほとんどでした。寡分割照射は麻酔回数の少なさや通院にて実施可能といったメリットがある一方で、当院の経験や過去の報告から週5回照射(通常分割照射)と比べると犬の鼻腔内腫瘍、頭頸部扁平上皮癌などにおいては腫瘍制御効果は落ちると考えております。(人医療において多分割照射とは1回線量を通常分割照射よりも下げて総線量を増やす照射プロトコールとして定義されております。)本講演でも取り上げましたが、特に猫の扁平上皮癌においては、寡分割照射の効果は低いとされており、当院でも寡分割照射を実施した症例における奏効率は非常に低く十分な治療効果を得ることが困難でした。現在は、通常分割照射や加速分割照射などの分割回数の多い照射プロトコールも腫瘍の性質、ステージ、ご家族のご希望等を勘案して採用しております。生存期間に関しては、既にエビデンスとして確立しておりますが鼻腔内腫瘍においては週1回照射よりも週3〜5回照射の方が良好であるように実感しております。また、本講演の頭頸部腫瘍から外れますが、脳腫瘍や肛門周囲の腫瘍では正常組織の晩期障害を考慮し通常分割照射を推奨することがほとんどです。
 
 
Q3:猫の鼻腔内リンパ腫で放射線治療と化学療法を併用される際、化学療法のプロトコルは何を選択されていますか?
また、放射線照射と抗がん剤の投与のタイミングはどのようにしてますか?
(放射線照射と同日に抗がん剤を投与しているのか、間隔を空けているのか。) 
基本的な質問で恐縮ですが、宜しくお願い致します。
 
A3(後藤 匠先生):ご質問いただきありがとうございます。
化学療法のプロトコールについては、エビデンスとしてはCOPあるいはCHOPベースのプロトコールが報告されておりますが鼻腔内リンパ腫におけるプロトコールは確立しておりません。私は猫のリンパ腫に関しては、腎機能低下がない限りCHOPを選択しております。
猫では犬と比較してドキソルビシンのリンパ腫に対する奏効率が劣りますが、過去の報告(Moore AS, JVIM, 1996)においてCOPにドキソルビシンを追加することで寛解期間が延長することが示唆されており、私自身ビンクリスチンやL-アスパラギナーゼが無効だったもののドキソルビシンによって長期寛解した鼻腔内リンパ腫の症例を経験しており、このような背景からCHOPを選択しております。抗がん剤治療のタイミングですが、基本的には放射線治療と同日に実施しておりますが特に大きな問題は生じておりません。また、食欲不振などが生じている場合には放射線治療を1-2回程度実施し一般状態を改善してから抗がん剤治療を併用していくこともあります。
 
 

教育講演:化学療法の副作用とその対処法 原田 慶 先生

Q4:L-アスパラギナーゼの投与法についてですが、腫瘍学テキストでは皮下投与になっておりますが、筋肉内投与をされている先生方も多いかと思われます。
また、筋肉内投与に比べ皮下投与では反応が認められるまでの時間、反応持続時間、生存期間が中程度にまで減少するとの研究結果もあると桃井先生監訳の書籍で見ました。 この辺りはどうなっているのでしょうか。
 
A4(原田 慶先生):ご質問ありがとうございます。こちらがその引用文献になります。
J Am Vet Med Assoc. 1999 Feb 1;214(3):353-6.
Comparison of the effects of asparaginase administered subcutaneously versus intramuscularly for treatment of multicentric lymphoma in dogs receiving doxorubicin.
またこの薬剤は人では静脈注射か筋肉内投与になっています。注射による痛みの問題はありますが、筋肉内投与の方が望ましいと考えています。また副作用に差はないとのことでした。
 
 
Q5:貴重なご講演ありがとうございました。抗がん剤を使用する機会が多く、改めて勉強させていただく良い機会となりました。2点質問があります。
・骨髄抑制について
抗癌剤の副作用で不可逆性の骨髄抑制が生じたご経験はありますか。
また、骨髄抑制が顕著な場合にG-CSF製剤は反応が認められるまで投与されていますか。数日間で反応がなければ休薬していますか。もし、参考になさっている基準などがありましたらご教示いただけますと幸いです。
・門脈体循環シャントの症例について
門脈体循環シャント(後天性)が生じている患蓄での抗癌剤を使用したご経験はございますか。小肝症や低アルブミン血症など肝機能低下が認められるような場合には、肝代謝の薬剤は副作用が増強されるのでしょうか。また、肝代謝以外の薬剤であれば問題はないのでしょうか。もしご経験などがありましたらご回答いただけますと幸いです。
お手数ですが、宜しくお願い致します。
 
A5(原田 慶先生):ご質問ありがとうございます。
G-CSF:明確な根拠はありませんが1500/μlになるまで5μg/kgにて1日1回、SIDで投与しています。上がったようにみえてG-CSF投与を中止すると下がっていく症例もいますので注意が必要です。
PSS:マルチプルシャントがある症例で使用したことは明確には覚えていないです。ただ、おそらくビリルビンが上がっていなければおそらく通常通り治療を行うと思います。もちろん避けられば避けるに超したことはないと思いますが、薬剤を選べないことの方が多いと思います。
 
 
Q6:G-CSFの使用について:犬猫ででおすすめする投与回数、投与間隔があれば(もしくは先生がよくされている投与法)を教えていただきたいです。今のところ人間にならって5日間連続投与か、費用面から1回投与で支持療法しながら回復を待つような形で使ってます。
 
A6(原田 慶先生):ご質問ありがとうございます。ヒトでは推奨されていませんが発熱性好中球減少症時に1500/μlになるまで5μg/kgにて1日1回、SIDで投与しています。
 
 
Q7:・FNの時にG-CSF製剤投与する症例は半数ぐらいと講演で話されていましたが、投与するしないの判断をもう少し詳しく教えてください(投与した半数の症例はなぜ投与に至ったのでしょうか)。 
・T-Bilが1.5を超えると減薬などという肝毒性の話で、以前から気になっていたのですがロムスチンなどは減薬をしたりは考えなくて良いのでしょうか?また、不可逆性の肝毒性が出てくるとどのような状況になっていくのでしょうか、どの程度の肝障害で投与をやめるべき(あるいはニムスチンへ変更)なのか教えてください。 
 
A7(原田 慶先生):ご質問ありがとうございます。
FNの際にG-CSFを投与しないケース。
1.初期治療に反応しすでに徴候が改善している場合。
2.薬剤と投与後の日数の関係で必要ないと判断した場合。この二つで考えます。
例えば犬のロムスチン投与後4日目で好中球減少症0/μl、発熱+全身状態悪い、であれば打ちます。犬のシクロホスファミド10日目、好中球減少症800/μl、発熱+全身状態良好、では打ちません。ロムスチンも減量するべきだと思いますが、おそらくそういった局面に出会うことが少なかったり、錠型の問題で減量が出来ないことなどであまり問題になっていないんだと思います。自分自身ではロムスチンの肝障害で肝不全になった症例は経験がありません。しかし薬剤性の肝障害で肝不全になるので黄疸が出ていわゆる肝不全になっていくものと考えられます。ロムスチン投与時にALTが基準値上限の3−4倍で投与延期にしています。薬剤の変更に関する定義はありません。通常待てば肝酵素は低下しますが、待つことにより投与間隔があき薬剤強度の低下が懸念されます。このため効果と副作用の程度からそのままCCNUで行くのか、減量するのかおよびその他の薬剤に変更するかを検討する必要があります。ただし徴候が出るあるいは黄疸が出るような肝障害ではその他の薬剤への変更となると思います。
 
Q10:ドキソルビシンによる蓄積性の心筋毒性ですが、具体的にはどの程度FSが低下した場合に中止と判断していますか?
 
A10(原田 慶先生):ご質問ありがとうございます。
FS28%以下で中止と判断しています。
しかしこれ以上高い数値であっても、小型犬ではかなり低下しないと28%まで下がらないです。人ではFSが10%低下することも中止の基準になっているため前後での比較も参考にしています。
 

総合教育講演:B−3 化学療法 田川 道人 先生

Q8:Lアスパラゲナーゼのアレルギー反応は猫では起きない、あるいは起きても軽度の症状と考えて良いのでしょうか?よろしくお願い致します。 
 
A8(田川 道人先生):質問ありがとうございます。猫でLアスパラギナーゼによるアレルギー反応が起きないか、ということについて過去の報告では68頭の投与でアレルギー反応は認められなかったとされています。犬と比較するのその発生は少ないですが、症例数が少ないためそれが真実かは追加試験が必要と考えられます。個人的には犬も猫もLアスでアナフィラキシーの経験はありません。複数回投与しても起きないのが実際かと思います。ただし、どんな薬剤でもアナフィラキシー反応は起こる可能性があり、蛋白製剤であるためその可能性があることは忘れてはいけないと思います。起きても軽度かどうか、という点については正直わかりません。
 
Q11:大変わかりやすい講演ありがとうございました。初歩的な質問で大変恐縮ですが以下L-ASPとCBDCAの内容について質問させて下さい。 
(1)L-ASPについて リンパ腫のプロトコールとして、UW2 5やCHOP療法の初回に使用されると思いますが、この投与は状態によっては省略されることもあると文献に記載されていました。省くことで治療成績は変わりますか? また、どのような場合に省略されているのでしょうか?
そしてVCRと併用した場合、どちらの副作用で骨髄抑制が強く出ているのか判断がよくわからない場合があります。 3週目にVCRのみ投与する際に、 VCRの投与量の調整が難しく感じたことがありますが、どのように判断されているのでしょうか…。
(2)CBDCAについて 完全切除困難であった乳腺癌の中型犬、 また肛門アポクリン腺癌の大型犬に、3週間に1回投与しております。 基本的に4-6回の投与が推奨されているようですが、両症例とも既に転移が疑われる為、可能な限り投与し続けたほうがいいのでしょうか?
大変お忙しいとは思いますが、 ご教授頂ければ幸いです。 どうかよろしくお願いします。
 
A11(田川 道人先生):(1)過去の報告でCHOPにL-ASPを併用した場合としない場合で比較した研究がありますが、寛解期間、反応率、生存期間、有害事象いずれも有意差は認められず、併用するメリットはあまりないとされています(MacDonald VS et al., JVIM, 2005)。
ですので省略しても大きな影響はないと考えられますが、省略するかどうかはケースバイケースかと思います。省略する状況としては、膵炎の既往がある場合は避けますが、その他であえて省略する必要もないのでだいたい投与しています。
また、逆に使用する場面としては、飼い主が抗がん剤の副作用を心配されているケースで副作用の少ないL-ASPを先行投与することが多いです。
VCRとL-ASPの併用で骨髄毒性が増強すると以前から言われています。
申し訳ないのですが、自分は同時に投与することはなく、L-ASP投与して1週間後くらいからCHOPを開始することが多いため先生のような状況で悩んだことがありません。
ただ、同時投与で強い骨髄毒性が出たのであれば3週目のVCRは多少減量したほうが安全かと思います。
(2)「両症例とも既に転移が疑われる為、可能な限り投与し続けたほうがいいのでしょうか?」とのことですが、転移が確認されても投与を継続すべきかどうか、という意味合いでよかったでしょうか?
術後の抗がん剤は転移抑制を目的としているため、投与中に肉眼的な転移が成立してきてしまった場合はすでにその薬剤の効果はないものと思われます。その場合、投与継続にあまり意味はなく、症例が薬剤に対し副作用がほぼ認められず、使用していたほうが転移の増殖が緩やかと感じるんであれば飼い主様と相談の上継続してもよいかと思いますが、個人的には転移が出てきたら投与は中止します。
4−6回というのは論文での投与方法で一般化していますが、効果があり副作用が許容できるようであればそれ以上続けても問題ないと思います。投与しすぎると白血球や血小板の回復が遅れることがありますのでご注意ください。
 

総合教育講演:A−3 治療学総論 石垣 久美子 先生

Q9:化学療法の説明の中で、 大きな腫瘍を構成する細胞の大部分はG0期であり、外科・放射線治療で縮小すると再び分裂期に移行する、とありますが、 なぜ大きな腫瘍ではG0期の細胞の比率が多くなるのでしょうか。 
 
A9(石垣 久美子先生):質問ありがとうございます。
「獣医腫瘍学テキスト」177ページから178ページにかけて、「すなわち、このような大きな腫瘍塊では細胞周期のG0期間(休止期)の細胞が主体をなしている。」と言う説明があります。
178ページ図10を参照していただくと、初期の段階で腫瘍が小さい場合、すなわち成長期(高い成長率)において腫瘍細胞は化学療法剤により感受性を示す傾向がある、とのことから大きな細胞の場合化学療法に対するは感受性が低く、休止期にあると考えられます。一般的に化学療法が作用するのは、細胞分裂の過程にある細胞、といわれています。細胞分裂の活発でない時期は休止期にあり、(おそらくこの休止期にある細胞を大きな腫瘍を構成する細胞として置き換えて考えており、)休止期にある細胞も外科療法や放射線療法などで腫瘍の体積が減少すると再び細胞分裂を開始するため、化学療法に感受性となります。G0期の細胞を縮小させ術後補助化学療法を行うことが理論的にも有効だと言われています。
 
 
*2月28日配信終了までにお受付させていただきました質問に回答をいただきました。
 ぜひご参考になさってください。

 

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